来年の3月に、晴れて鎌倉に棲家を構えることになりました。
観光地鎌倉の象徴でもある鶴岡八幡宮から歩いて3分のところです。
決めたら決めたで、何だか、嬉しさと不安が半々の、複雑な気持ちですね。憧れは憧れのまま、そっとしておいたほうが良かったのかなって。
でもね、決めた(苦笑)。
人間万事塞翁が馬。
山あり、海あり、文化あり、歴史あり、の鎌倉を、
ゆっくり時間をかけて味わっていきたいですね。
●心落ち着く主の人柄と
●ラーメンの味
そのラーメン屋に入った瞬間、外でゴーっという雨が地面を叩きつける音がしました。初めて入った店なのに、私は店の主に馴れ馴れしく「ひどい雨だね」と声を掛けました。すると主は調理の手を止めて、外を見やって「そうですねぇ」。特別愛想がいい、とは言えないけれど、客の問いかけに実直に答えてくれたその様に、私は何だか心がホっと温かくなりました。付かず離れず。店主と客との心地良い距離感を大切にしているラーメン屋なのだ、と感じ入ったのです。なるほど、後になって調べたら、観光客で賑わう「小町通り」の一等地に店を構えて、もう30年以上経つのだとか。バブルの頃も、不景気の今も、世の中の移り気な流れに、何ら惑わされることなく店を切り盛りしてこられたのも、ひとえに店主の人柄によるのかな、と、不遜にも考えてしまいました。
注文はしょうゆラーメン。店主も実直ならば味も実直。にごりの無い濃い目のスープに縮れた細麺。適度な量のメンマとネギ、そしてチャーシューが一個。奇をてらわない素材とシンプルな味。結局、ついつい通っちゃうのは、心落ち着けて食べられるこんな店の、この味なんですよね。
■ひら乃
http://members.jcom.home.ne.jp/3372442101/ra-men%20hirano.htm
●江ノ電を足代わりに使う贅沢
その日、3月初旬、不動産販売会社との打合わせが早めに終わった私は、余った時間を海辺の喫茶店で過ごそうと思い、江ノ電に乗り込みました。過去に数回、観光でしか乗ったことが無かった江ノ電も、近い将来は、気軽に気分転換に使える「足」になるのかな、と思ったら、なんだかわくわくすると同時に、そのうち江ノ電の「ありがたみ」もなくなるのかな、という気持ちもわいてきて、それはそれで悲しいなとも思ったり。まぁ考えてみれば、鎌倉に住んでいる、という感動をいつまでも味わっていたい、いつもどおりの日常のなかに何気ない喜びを感じていたい、という思いもあって、こうしてわざわざ日記をつけているわけなんですがね。
●開店45周年を迎えた
●鎌倉の「老舗」ドイツ料理屋
鎌倉駅から二駅目、由比ガ浜で下車。特に理由はありません。駅名に「浜」とあるから、海も近いかな、って(笑)。とはいえ、駅周辺は、閑静な住宅街といった雰囲気で、海があるような気配は感じない。海が見えてから降りれば良かったかな、とわずかに後悔しながら海の方向に2~3分ほど歩を進めると、見えてきました、湘南の海が。
本当は、海辺をぷらぷらと散策したかったのですが、雲行きも怪しかったし、何よりとても寒かったので、一番最初に目に入った海岸沿いのレストランで一杯することにしました。「SEA CASTLE」というドイツ家庭料理屋さんです。鎌倉にドイツ。一貫性のなさに一瞬躊躇したのですが、思い切って入って良かった。この店の店主と思われる初老のドイツ人女性が私を笑顔で招きいれ、海が見える「特等席」に案内してくれたのです。彼女の気さくな振舞に、初めての店だという緊張感は無くなっていました。
さて、その「SEA CASTLE」は、この場所に店を構えて(なんと)45年。なかでも、本場の調味料で毎朝作られるウィンナーは絶品だとか。本場ドイツビールの品揃えも豊富で、由比ガ浜で一泳ぎした後に、ウィンナーを肴にドイツビールをぐいっとやるなんてぇのは、最高だろうなぁ~なんて思いながら、所持金が無かったので、ウィンナーは諦め、ポテトとビールを頼むことにしました。ポテトといっても、ドイツ人が調理したら、それはジャーマンポテトなわけですからね。
●本場ジャーマンポテトに舌鼓
ビールのほうは、その初老のドイツ人女性に「お任せ」で注文。「それでは、××××、はどうですか?」と聞いたことの無い銘柄を薦められたのですが、知ったかぶりしてその「××××」にしました。が、この「××××」がメチャウマ。「××××」はなんだったのでしょうか……(恥)
ビールで喉の渇きを潤していると、ほどなくジャーマンポテトが到着。5mm厚にスライスされたポテトたちを、多めの油で両面を狐色になるまで焼き、頃合を見て塩を振って出来上がり、と思われるその料理。おそらく、ポイントは3つあって、「焼き加減」「油の種類」「塩の量」とみた――なんてひとりよがりな想像をしながら一口。あぁじゃがいもだなぁ、が感想。余計な味付けなど一切無く、油で焼いて塩をふる。これが素材の美味さを引き出す一番の方法だと言わんばかりの、ドイツ観念論的実直さ(?)に、敬服しつつ、襟を正しながら(笑)食したのでありました。
あぁ、美味しかったです。と、その店主の女性に言ったらにっこり笑って、ありがとうと応えてくれました。「鎌倉に引っ越そうと思っているんです」と言ったら、また来てね、とコースターを頂きました。ダンケ・シェーン。
http://www.cityfujisawa.ne.jp/~portsite/seacastle/seacastle.htm
鎌倉のメインストリート
若宮大路の段葛(だんかずら)
鶴岡八幡宮から南西の方向に伸びる若宮大路の中央に「段葛」と呼ばれる小高い石畳の小道が一本、凛と通っています。春ともなれば、小道の両脇に植林されている桜が満開となり、鎌倉駅を降りた観光客は、満開の桜がまるでトンネルのようになった段葛をくぐり抜けて、鶴岡八幡宮の参拝に向かいます。
そんな鎌倉の「メインストリート」でもある段葛を店名に冠した、そば屋の「段葛こ寿々」。鎌倉駅と鶴岡八幡宮を結ぶ若宮大路のちょうど真ん中辺りにあるこのお店は、信州から取り寄せた玄そばの手打ちを味わうことができるお店。小さなお茶屋風の店構えには、そばを食べたい!と思っていなくとも、ちょいと立ち寄って長旅の疲れを癒したくなる、そんな気軽な引力を感じます。
そばもわらび餅も
味だけでなく食感が最高
いただいたのは、一杯のざるそば。
まずは汁につけず、一本のそばをそのまま口に放り込みます。上品なそばの香りが鼻を抜けたかと思えば、そんな上品さとは裏腹のコシの強い歯ごたえが待っています。強いコシに抗すべく、しっかりとアゴを動かすうちに、必然的にさらなる上品な香りが鼻に舌に口中に広がるわけです。う~ん美味。汁をつければ、その香りはいっそう引き立ち、いっきに完食。味は上品ですが、とにかく、ずずっと音を立てて早食いしたくなる、そんな庶民性を併せ持ったそばなのでありました。
そばの次は、わらび餅。
これが絶品。きな粉と黒蜜のかかった約2cm角のわらび餅を口に頬張るやいなや、ひんやりと、そして口中に吸い付くような食感が広がります。なんじゃこりゃ、と半ば驚き、慌てて口を動かす。すると今度は想像以上の弾力の強さに驚きます。餅なのに弾力性が均一じゃなく、中心部にいくほどこれまたコシがあるのです。ははぁ、と感嘆しながら、3切れほどをゆっくりと賞味。舌もお腹も大満足、なのでした。
鎌倉に引っ越したら、空いているころを見計らって通いたいね。わらび餅でお茶しに来るだけでも楽しいね……というような話を妻としながら、店を後にしたのでした。
http://www.kamakuratoday.com/meiten/kosuzu.html
憧れの鎌倉に
引っ越す予定です
古都、鎌倉を終の棲家にせんと、只今、マイホーム購入を検討しております。
今後、念願叶う日まで、たびたび訪れるであろう、鎌倉の横顔を、拙なりにご紹介できればと思っております。